より豊かな作業療法の推進と公益活動に取り組んでいます

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精神障がいの作業療法

対象は?

うつ病・統合失調症・認知症・アルコールや薬物依存症などによる症状や障がいにより、家庭での生活や、仕事などが困難な方を対象にしています。
精神科の病気は、風邪や骨折などと違い、周囲の人達や自分自身でさえも、その特徴は理解しづらく、『これでは、ダメだ』『何とかしないと』と、頑張って生活をし続けた結果、ひどく疲れてしまい、生活する自信を失くしている方が大勢いらっしゃいます。

どんなことを行うのですか?

まず、皆さんは日々の生活でストレスを抱えた時、また辛く苦しい時どうやって対処していますか?

例えば、 カラオケに行く・ドライブに行く・買い物に行く・人に話を聞いてもらう・すぐ寝る・・・など、状況に合わせて様々な対処をしていると思います。
しかし、精神障がいの病気を持つ方の多くは、この対処をしない方や、間違った方法などにより、上手く発散できず、眠れなくなったり、だるさが続いたり、『こんなはずではないのに』『誰も信用できない』などの悲観的・被害的な考え方、それに伴う激しい怒りや悲しみなど、身体や考え、感情などに様々な症状が出現し、うつ病や統合失調症、人格障害などの診断となった結果、日常生活に影響を及ぼし、自信を失くしてしまいます。
精神科における作業療法はその失った自信を回復するために、病気とうまく付き合いながら生活する方法を一緒に考えるとともに、生活のどこでつまずいているか(買い物ができない、人とうまく話をすることができないなど)を一緒に探します。そして、そのつまずきを乗り越えるための方法を対象者自身が考えられるよう支援します。つまり、症状や障害により出来ないことは何かではなく、どうしたら出来るようになるのかを当事者と一緒に見つけ、お手伝いをするお仕事です。

内容は“買い物方法”“金銭管理方法”などの生活に関することから、“行動から推測
される相手の考え”や“上手く自分の思いを伝えるための方法”などの対人関係に関すること、また、風邪で言う、咳や発熱のように、小さな症状が再び起こった時の対処法や、引き金となったストレス発散方法を考え、体験する事で対象者自身が『これなら、やれるかも』と思えるような自信の回復を図ります。細かい目的や作業療法の方法について、2つの例を挙げてみます。

例1.『外出したいけど、出来ない』総合失調症患者

  1. ポイント整理
    まずは外出出来ない理由が何なのかを明確にします。
    例えば、①公共交通機関の利用方法が分からない②お店に行くと緊張してしまう③目的の商品が見つからないとき、店員に聞けない④人込みが苦手などから、対象者が気になっている事が何かを明確にします。
  2. アプローチ
    ①②の場合は、事前に利用方法に関するイメージを作り、その後、作業療法士と一緒に体験し慣れていきます。③の場合は、模擬的な場で伝え方の練習をした後、実践してみます。④であれば、“人が少ない時間帯は何時なのか”や、“比較的人が少ないお店はどこなのか”を実際利用している他者に確認するための練習を行い、対象者自身が確認します。

例2.『復職したいけど、自信が無い』入院中のうつ秒患者

  1. ポイント整理
    うつ病患者には入院前のとてもつらい状態を“急に穴に落ちたような感覚”と表現する方が多いのですが、実はストレスはずっと蓄積されており、体や行動、考え方や感情も入院以前からストレスのサインを出しています。例えば、“寝つきが悪くなった”“夜中に何回も目が覚める”“身体がだるい”“物事の判断が遅くなった”“楽しかったものが、つまらなく感じる”“イライラする”など、一般的に言う“疲れのサイン”がこれに当ります。

    また、うつ病にはストレスや疲れだけでなく、本来持っている考え方や行動のパターン(くせ)を対象者自身が自覚できていない場合が多いのも特徴です。

  2. アプローチ
    まずは、軽いストレッチやアロマなどで、ほっとできる時間を生活の中に作り、エネ ルギーの充電を図ります。そこから、疾患の特徴に関する勉強会や、同じ悩みを持つ仲間との交流により、『自分だけではなかった』という安心感を作り、必要によっては、元々持っている出来事に対する“受け取り方(きっと、上手くいかないだろうなぁ・○○するべきだ等)”の特徴を見つけ、悲観的や被害的な考えが強くなり過ぎないような工夫をします。そうすることで、早期発見・早期対処ができるようになれば、仮に再発しても、ひどくならずに済みます。他にも、軽スポーツや散歩などで体力面の回復も図ります。

※上記の例はあくまで1つのパターンであって、同じ疾患でも全ての対象者に当てはまるものではありません。対象となるのは疾患や障害でなく、それと共に生活していく人なわけですから、その方に合う方法は様々です。作業療法士は対象者と共にポイントを整理しながら、対象者が『これなら、やれるかも』という思いを持てるような場を作り、アプローチしていく職業です。

精神障がいの作業療法はどこで行われていますか?

医療機関では精神科分野の病院で、病棟だけでなく、デイケアや訪問看護で行われています。